世界は民主主義ではなく権力者によって動いている。(パレスチナ問題より)

今回は前回に引き続きパレスチナ問題について本を通じて理解したことを書いていきたいと思います。前回は、なぜパレスチナ問題が起こったのかということについて「中東の考え方」という本を中心に理解をまとめました。

前回のまとめを通して、パレスチナ問題には、パレスチナに住んでいるアラブ人、イスラエルに住んでいるユダヤ人ともに言い分があって、この問題の元凶は大英帝国だったことが分かりました。

となると、どちらかの立場に肩入れするのは正直難しい。でも、アメリカはイスラエルに肩入れしているイメージが強いです。「なんでなんだろう・・・?」と素朴に不思議に思いました。なんとなく、イスラエルはユダヤ人の国ながら、アラブの国々に囲まれているので、ユダヤ人もいるアメリカにとっては守らなければならない国なのかなというイメージはありますが、実際どうなんだろうと。

この疑問に答えてくれたのは、この本です。↓

前回エントリーのパレスチナ問題が起こった経緯を教えてくれたのはこちら↓

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

「イスラエルロビーとアメリカの外交政策1」を読むと、アメリカはイスラエルが建国された当初は、もともと住んでいたパレスチナ人とイスラエル人のどちらかに肩入れするといった態度は取っていなかったようです。以下のように本の中で説明されています。

一九四八年にイスラエルが建国されたとき、米国の政策立案者はイスラエルを戦略上の資産であるとは見なしていなかった。新国家イスラエルは弱体で、攻撃を受けやすいと見なされていた。米国の政策立案者は「イスラエルとの関係をあまり緊密にしすぎると、他の中東の国々で米国の立場を損なう」と考えていた。
「イスラエルロビーとアメリカの外交政策1」より

一方で、当時の米国大統領トルーマンは、イスラエルを支持します。なぜ支持をしたのかについては、以下の説明が書かれています。

トルーマン大統領が国連によるパレスチナ分割案を支持し、イスラエルを承認したのは戦略上の必然性からではない。それはトルーマンが純粋にユダヤ人の苦難に同情したからだ。また「ユダヤ人が彼らの大昔の故郷の地に帰るのを認めることは望ましい」というある種の宗教的信念からだった。さらに、イスラエルを承認すればたくさんのユダヤ系米国人に支持されるので、内政上の利益が得られることを知っていたからである。
「イスラエルロビーとアメリカの外交政策1」より

つまり、イスラエル支持は米国の国益を損なう可能性があるものの、大統領に対するユダヤ系米国人の支持を強める意味で、トルーマン大統領はパレスチナ分割案を支持しイスラエルを承認したということのようです。これが、米国のイスラエルへの肩入れスタートだった。

そして、時代は冷戦に入ります。冷戦に入ると、ソ連がアラブ諸国へ支援するのに対して、ソ連の中東への影響力を封じ込めるために、米国がイスラエルに支援するという構図が出来ていくと本に書かれています。

ここまでみてみると、米国内の支持を取り付けるという意味で、米国議員はイスラエルを支持する(してしまう)理由があるということと、冷戦期は、ソ連の中東進出を封じ込めるためにイスラエルを支援する必要があったということが分かります。(ただ、本にはソ連南下に対してイスラエルは対応する気はなかったと書かれているので、冷戦期にイスラエルが果たした役割は小さかったかもしれません。)

そして、冷戦が終了します。

少し横道にそれますが、そもそも、米国は他にも貧しい国が沢山あるにも関わらず、イスラエルへの支援額が最大のようです。

冷戦が終わると、イスラエルへの支援理由は、米国議員がユダヤ系米国人の支持を受けるというものが残ります。それだけの理由で、最大の支援をイスラエルにおこなっているということです。議員にとっては、「それだけの理由」ではないのでしょうが、米国がイスラエルを支援することによってアラブ人の反感を買い、その結果テロが起こっていると考えるならば、「それだけの理由」ではないでしょうか。。

この本では、米国議員がイスラエルを支持する理由は、イスラエルロビーにあると詳しく説明されています。彼らが巧みなやり方(特に違法なやり方を取っている訳ではない)で議員をイスラエル寄りにしていっていることが描かれています、因みに米国の政策決定に影響を及ぼしているロビー団体は、このイスラエルロビーくらいだそうです。

本の著者は、現在のイスラエル支援は、米国の国益に適わないと主張しています。この本を読む限り確かに米国が現在のイスラエルを支援する強力な理由はないように思えます。

混乱してきたので、本から得た事実を整理すると・・・

1. 米国はイスラエルに対して、最大級の支援をしている。
2. 米国がイスラエルに支援することで、周りのアラブ諸国から反感をかっている。
3. 米国がイスラエルを支援することに適う国益は現在はない。
4. 米国がイスラエルを支援する理由は、イスラエルロビーにある。

となると、「イスラエルロビーに米国は振り回されて、イスラエルに支援をする結果、アラブ諸国から反感を買い、テロなどにより国益を損ねているのが現状」ということですかね。。

イスラエルロビーという集団はなんか私の想像を超えたところで世界を動かしている感じがします。

ただ、権力ってまさにこういうものなのかもとも思います。大勢からみると、明らかによくないと思われることであっても、一部の権力をもっている人にとってメリットがあることであれば、それがまかり通ってしまう。。

もしかしたら、今回の米国によるシリア攻撃も、イスラエルにとってメリットがあるから、イスラエルロビーが裏で米国が攻撃する方向に動かしている可能性だってないとはいえないのではないかと思います。それに日本が同調するなら、日本もアラブの国々から嫌われるかな。

今の日本でも、一部の権力者が社会を動かす仕組みはあると思います。たとえば、消費増税をみてみても、なんとなく「増税やむなし」みたいな雰囲気出来上がっているけど、マジなんですね。何のためにどのぐらいお金がいるから、その分を補うために消費税をあげるという具体的な話ってなされていない気がします。なんとなく、社会保障関係の費用が足りないという漠然とした「雰囲気」を作って、一部の権力者が増税の方向にもっていっているとは言えないでしょうか。

民主主義というけど、なんとなく大衆は自由を感じる一方で、社会の構造に関わる部分は一部の権力層が権力層にとっていいように動かしているというのが実態なんだということを改めて感じました。

そんな時代だけど、日本は平和だし、努力を重ねればやりたいことをある程度は達成できる社会だから幸せだなとも感じるのです。

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