背景を知ること。(中東をめぐる問題を通して)

再び、フィリピン留学がらみのネタです。フィリピンに留学した際に毎週英語でプレゼンテーションをする授業がありました。その授業で、友人の1人がアルカイーダについて話をしたことがあったのです。

プレゼンを聞いた後、参加者がプレゼンについて言いたいことをいう授業ですが、その授業に出席していた生徒全員が、アルカイーダ⇒9.11を想像し、アルカイーダ⇒悪といった内容のコメントをしていました。

ただ、その授業の先生(アメリカ人)が、「アルカイーダのビンラーディンは、イスラム教徒にとってはヒーローだよと、そしてアメリカが正しいとも言い切れない」という意見を出しました。

この意見を聞いたとき、私は、「9.11のような事件の首謀者がヒーローなはずないだろ」といった意見をしましたが、それと同時に自分がイスラム教や中東の歴史についてなんも知らずに、今までメディアを通じて得てきた情報だけでそれが正しいと考えていることに気づき、日本に帰ったら少し調べてみようと考えていたのです。

そして、最近よい本にめぐり合いました。

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

<中東>の考え方 (講談社現代新書)

この本、内容濃いです。少し専門的な知識や世界史の知識がないと分かりにくい部分もあるので、簡単にすべて理解できたという訳にはいきませんが、中東の現状がどのような歴史を踏まえているのかが分かりやすく書かれています。

この本の著者が、ご自分の専門分野を少し超えて(学者の方が専門を超えて本を出すのは、他分野の専門家からちゃちゃが入ることもあるようで、勇気がいるそうです。)、少しでも中東問題の訳分からなさを解消しようとしてくださったことに感謝です。そして、私自身、この本を読んだことで中東問題の背景を少し理解できたと感じています。

余談ですが、これから日本と親密になるであろう東南アジア諸国には、マレーシアのようにイスラム教徒が沢山いる国もあります。そういう国に旅行にいく、または移住するという時に、イスラム教や中東情勢についての知識をもっていることは、プラスだと感じます。私は、イスラム圏=危険というイメージをもつ傾向ありましたが、この本を読んで、そういう訳でもないこと理解できました。

本を読んで理解したことは、中東をめぐる問題の原因は、宗教というよりも、「石油」をめぐる利権争いの影響という意味合いが強いこと。具体的には、この利権をめぐって、ヨーロッパ、アメリカ、ソ連が争う影響を中東諸国が多分に受け、その結果として、イスラム教徒が自分たちの国を取り戻す運動を展開、その一部は過激なものに変わったものもあるということ。

本を読む中で、如何に中東諸国が欧米諸国の干渉を受けていたのかという事実には驚かされました。今までは、なんとなく中東は悪い国というイメージをメディアを通じて刷り込まれ思考停止していましたが、この事実をみると、一方的に中東が悪で欧米が善ということではなく、中東諸国にも問題を起こす正当な理由があるような気がします。

ただ、だからといってテロが許されるとか、核兵器をもっていいとかそういうことではありません。もちろん。逆に善だから戦争しかけていいとかそんなことでもない。ダメなものはダメです。

中東諸国の人が自分たちの国を求めるという気持ちは、今の私にはすごく希薄な感覚です。おそらく、今の日本がどこの国に支配されるでもなく、経済的に困窮する訳でもなく、快適に暮らせていると感じているからだと思います。

NHKの「八重の桜」では、会津藩が会津戦争に負けた後、会津の人たちは、「会津の誇り」を守る意識や長州、薩摩に対する恨みをもつように描かれています。日本でも、人が理不尽さを感じたり、抑圧されるということを通じて、自分の居場所を確保する動きがあったことから考えて、国や人が置かれる環境が問題を引き起こすということなのかもしれません。

色々複雑なのは確かですが、問題の根本にあるのは、自分らしく生きれる場所が欲しいということなのかと感じます。それを阻む国や人は憎い…という感情。根本にあるものはそれほど複雑ではないのに、歴史や人の思惑や現在の環境がすごくややこしいものに変えていっているんだと感じます。

今回1冊の本を読んだだけですが、今までみていた世界と異なる世界を発見することができました。やはり、ものごとをみるときは色々な側面からみないと、事実には近づくことができないことを実感しました。

これからも中東関係は、本を読みつつ理解を深めていきたいと思います。

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