安くてうまいスシローの決算書から想像する外食産業の未来

株式投資

おすし。

好きな人たくさんいると思います。わたしももちろん大好きです。日本のソウルフードですよね。ただ…結構いい値段しますよね。安く沢山食べたい!ということで、最近メディアで紹介されている安くておいしいおすしを提供しているという噂のスシローに行ってきました!

結論からいうとあの価格であの美味しさなら通いたいレベルです。わたしは先日行ったのが2回目でしたが、2回とも待っている人が大勢いるという人気っぷりです。(アプリで予約していくと待たずに済みますので、アプリ予約をぜひ利用してください。)

食べたあと、この安くてうまいの秘密を決算書から読み取れないかと思いスシローグローバルホールディングス決算短信を調べてみることにしました。そして、決算書の数字をみながら外食チェーンの未来がちょっとみえた気がしました。今回はそんな記事です。

スシローのおすし

かたい内容はあとにしてまずはおすしで幸せになりましょう!
ということで、わたしが先日スシローで食べたものをわたしのおすすめ度と合わせてご紹介します~!

黄金のとろ穴子(100円)

いまスシローでは、【世界の海からいいネタ祭】というフェアをやっています。そのなかのひとつがこの黄金のとろ穴子(黄海・東シナ海産)。これ、この日の中で一番満足したネタでした。口の中でとろけるお味です。これで100円は安い!

KZOおすすめポイント: 5 out of 5 stars

宇佐水産のさくら鯛(150円)

もうひとつこの日イチオシだったのは、【宇佐水産のさくら鯛】です。身がプリップリでおいしい脂を感じました。ちょっと高めの150円ですけど、150円以上の価値は十分にあると思います。ただ、にぎりが崩れちゃってたのがちょっと残念だったなぁ。でも、これも含めてスシローなんじゃないかと思います。その話はのちほど。

この宇佐水産のさくら鯛は、スシローのホームページをみると1日数量限定の商品のようですが、わたしが訪問した平日の夜遅めの時間帯でもまだ食べられました。そこまで急がなくても食べられるかも!?

KZOおすすめポイント: 5 out of 5 stars

しまあじ(150円)

この日ちょっと失敗だったのは、【しまあじ】でした。まず、1貫しかなかった。写真をみたときに気づけばよかったのですが、てっきり2貫くるものだと思い込んでいて、実際に1貫しかこなかったのでそのショックと、ショックを引きずったせいかそこまでおいしいとも感じなかったです(苦笑)

KZOおすすめポイント: 2.5 out of 5 stars

このしまあじで失敗したときに思い出したのが、【希少価値】でした。先日、村上世彰さんの「いま君に伝えたいお金の話」という本を読んだのですが、その中に、さんまの価格についてのくだりがあります。簡単にいうと、さんまの価格が高くなるのは、おいしいさではなくて、需要に対して供給が少ないときであるという話です。おすしを食べにいくとついつい【高いネタ=おいしい】と思いがちですが、【高い=希少】であって、【高い=かならずおいしい】ではないのです。だから、価格に惑わされずその時においしいネタを探したいと思います!

スシローの業績をみてみよう

では、少しおすしをご紹介したところで、ここからスシローの決算書でお勉強した話を書いていきます。また、途中でおすしのご紹介も入れていこうと思っています(笑)

と、その前にまず日本人の外食への支出の変化を押さえることにします。家計調査に【一般外食】という項目がありまして、そこから年間の外食への支出の変化をみることができます。

外食への支出の推移(家計調査より)

総務省統計局 家計調査(家計収支編)時系列データ(総世帯)を元に作成

※実質増減率:物価変動を考慮し支出額を前年度と比較した結果

このデータをみると、外食への支出は、2000年近辺と現在を比較すると若干減っていますね。最近景気拡大が続いているといったニュースが出ていましたが、外食産業にはそれほど追い風でない状態なのかもしれませんね。

さて、スシローはどうでしょうか。いくつか経営指標をみていきます。

売上高推移

スシローグローバルホールディングス㈱の決算短信を元に作成

営業利益率推移

スシローグローバルホールディングス㈱の決算短信を元に作成

ROEとROA

スシローグローバルホールディングス㈱の決算短信を元に作成

【まとめ】財務状況に不安はあるものの、営業成績は優秀

売上高、営業利益ともに上昇中です。お店にいった雰囲気がそのまま結果に反映されている感じです。利益率はこの業界はこんなものなのですかね。あとで他外食チェーンと比較するのでその時にわかればと思います。

ROAは、純利益÷総資産であらわされる数字で、資産を効率よく使って利益を出しているかをみる指標です。年々改善されており、日本の平均といわれている5%を超えているので効率よく稼いでいるといえそうです。

一方、ROEは、純利益÷自己資本で表される数字で、株主から集めたお金を効率よく使って利益を出しているかをみる指標です。こちらも10%~20%とよい数字です。ただ、スシローは、自己資本比率が低い(約30%程度)ので、借金が多いためにROEが高くなっているともいえます。

スシローのホームページに掲載されている沿革をみると、ここまでくるのに色々あったことを想像させる内容が書いてあります。少しネットで調べましたが、ここまでくる間に会社の売買を繰り返しているようで、その際に無形固定資産が増加し、借入金が増えるなどして財務状態が悪くなったようです。幸い、ここ3年をみると、固定負債の額は減ってますし、自己資本比率は上昇しています。

営業成績は好調ですが、財務に多少不安があります。ただ、改善してきているので、この勢いにのって改善してもらっておいしくて安いおすしを引き続き提供してもらえると嬉しいですね!応援の意味でも、たまには訪問しよう!

ちょっと休憩①…うに(100円)

【うに】もなんと100円です。見た目がちょっと小さかったので、「あー値段ほどほどなのかなぁ」と思いましたが、実際食べてみると濃厚でおいしかったです。100円なら満足できます。希少なものだから高くなりがちだけど、なんとか低価格で提供したいというスシローの気持ちが感じられるネタですね。

KZOおすすめポイント: 4 out of 5 stars

 

他の回転ずしチェーンと経営状況を比較してみる

スシローは、大きな借金を抱えているので財務の安全性には疑問もありますが、営業の数字は好調でした。これは、スシローだけなのか、それとも回転ずしチェーン全般に当てはまることなのか確認してみようと思います。

今回比較の対象としたのは、【くら寿司】と【かっぱ寿司】です。

売上高

各社の決算短信の数字を元に作成

営業利益率

各社の決算短信の数字を元に作成

各種財務指標

各社の決算短信の数字を元に作成

※自己資本比率=自己資本÷総資産

 →資産のうち自社の資産がどれぐらいあるかを示します。一般的にこの数字が高いほど安全性が高いといわれています。

※流動比率=流動資産÷流動負債

 →短い期間に返さなければならない負債に対してすぐに現金として動かせる資産がどれぐらいあるかを示したものです。これが高いほど安全性が高いといわれています。

※固定比率=固定資産÷純資産

 →長期間使用する固定資産を純資産でまかなえてみるかどうかを示します。この数字が低いほど安全性が高いといわれています。

※ちなみにくら寿司の売上高推移

㈱くらコーポレーションの決算短信の数字を元に作成

【まとめ】あなどれない…くら寿司

実はわたし、今回この記事を書く前は、くら寿司はダメだろうなぁと思ってました。というのも、6年ほど前に自動化されたおすしやさんがあるということで訪問したのです。味はそんなに悪くなかったと思うのですが、リピートしていきたいと思わなかったので、今はあまり流行ってないのかなと思っていました。

でも、数字見ると全く違いますね。スシローほど営業成績はよくないですが、売上高は年々上げてますし、財務状況もスシローと違って安定しています。今一度訪問してみる価値があるかもしれません。自分の主観がどれだけ信用ならないか‥‥(笑) ただ、最近のくら寿司のサイドメニューを押している感じはあんまり好きにはなれないのですが…。すしやはすしで勝負してほしいですよね。

かっぱ寿司は、ちょっと取り残されてしまっている感じですね。今後この2強とどのように戦っていくのかそれはそれで興味あります。買収される可能性もあるのかなぁ。

ちょっと休憩②…あじ(100円)

わたしが訪問した2回とも食べたのがこの【あじ】です。詳細は忘れてしまいましたが、市場から直接きているような説明が書かれています。前回食べたのよりも身が小ぶりだったので、日によって当たり外れがあるのかもしれませんが、これも満足できるお味でした!

KZOおすすめポイント: 4.5 out of 5 stars

すし以外の外食チェーンと経営に関する数字を比較してみる

さらにここからは、すし以外の外食チェーンと経営に関する数字で興味深いものを比較してみようと思います。今回調べてみたのは、【サイゼリヤ】と【鳥貴族】です。ジャンルは違いますが、どちらも安さを売りにしているチェーンということで今回比較してみました。

営業利益率

各社の決算短信の数字を元に作成

売上高に対する原価率と販管費の割合

各社の決算短信の数字を元に作成

【まとめ】営業利益率は変わらないが、すしは費用のかけ方が違う

営業利益率は、各社それほど変わらず5%程度です(幸楽苑はなんかあるんでしょうね。。。)わたしのイメージでは、もう少し高いのかなと思っていましたが。外食チェーンという産業自体それぐらいの利益率なのかもしれませんね。

ただ、お金のかけ方は違いがみられました。すしチェーンは他の業態と比較して原価率が高めです。これは魚の価格が高いってことですよね。一方で、すし以外のチェーンは販管費が高めです。これは、原材料よりも調理する人やホールスタッフなどの人件費がかかるということなんでしょうね。

わたしはこの事実が外食産業の未来を想像する1つのカギなんじゃないかなと思っています。

まわらないおすしは、原材料として高めの「魚」と「職人の腕」で作られたものなので高いのです。まわらないおすしやさんの決算書に書かれてる原価と販管費の割合は上のグラフで示した他のチェーンとそう変わらないのではないかと思います。

でも、すしチェーンは、「多くの人に安くておいしいおすしを提供したい」という目的で原価以外の部分を削りに削っているので、販管費の割合が原価を下回るくらいになった。

特にスシローは、販管費よりも原価の方が高いです。つまり、材料にこだわると同時に削れるところはどんどん削ってる。スシローには、しょうゆをつけるお皿はありません。おすしにはわさびははいっていません。わさびをつけたい人は、小分けのわさび(お刺身によくついているやつ)がレーンを回っていて、自由にとってつけます。会計にもスタッフがいない場合は、自分で会計して帰ります。これらのことには、賛否あるとは思いますが、わたしはおいしいおすしが安く食べれるならこれぐらいはまったく問題ないです。

「魚が高い」

この事実が工夫を生んでいるんですよね。日本のすしチェーンは「安くておいしいおすしを提供するため」にこの事実と戦い続けていて、ついには原価が販管費を超えるまできたってことなんだなと思いました。これはすごいことなんじゃないかと思います。

ちょっと休憩…③天然えびの食べ比べ(生・漬け/モザンビーク産)150円

このえびも冒頭のあなごと同じく【世界の海からいいネタ祭】で期間限定で提供されているものです。身がぷりっぷりでおいしかったですね。正直、漬けは味のよさがあんまりわからなかったから両方とも生でよかった気もしました。これで150円だもんね。おいしかったです!

KZOおすすめポイント: 4.5 out of 5 stars

【総まとめ】顔の見えない外食チェーンと顔が価値になる個人店

スシローの決算説明会資料をみると、引続き海外展開や省人化に投資をしていくことや、将来的にはおすしだけでなく和食にまでジャンルを広げていくことが書かれていました。

おすし以外の分野に進む際にも、今後IoTやAIなどの技術が発達することが予想される中で、スシローで実践している省人化のノウハウが生きるのではないかと思います。

一方、おすし以外のジャンルのチェーン店にとっても、この新しい技術登場がチャンスになると思います。もちろん、おすしとイタリアンでは調理工程が異なりますが、これから省人化していくという方向性は同じです。だいたい原価の倍ぐらいかかっている販管費を技術によって抑えることができるチェーンが出てきたらそれは強いと思います。もしかしたら、それをサポートするのがすしチェーンなのかもしれません。なぜならすしチェーンは、省人化のプロフェッショナルだから。

この変化を前提に外食産業の未来を想像すると大きく2つに分かれると感じます。1つは、どこでも変わらぬおいしさをできるだけ低価格で提供するチェーン店。そこに作り手の顔はありません。そしてもうひとつは、個人の信用に裏付けられた個人店。そこではチェーンでは味わえない作り手の人柄やストーリーがお店の顔として価値になっていくのではと思います。

いろいろなところでこれからは個人のブランド化ということがいわれてますが、外食産業でもそうなんでしょうね。

おまけ:コク旨まぐろ醤油ラーメン(330円)

最後におまけでスシローのコク旨まぐろ醤油ラーメンをのせておきます。だいぶおなか一杯だったのですが、どうしても気になったので注文してみました。

お味はわるくないですけど、やっぱりおすしやさんではおすしを食べた方がいいかな…という感じでした。これで3皿食べられると思うと、おすしの方がお得感強いです。

KZOおすすめポイント: 3 out of 5 stars

ではでは、今日はこのへんで。

またねー。

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